金属有機構造体(MOF: Metal-Organic Framework)は、分子のサイズや性質に応じた選択的な吸着・分離の機能を発現する物質であり、そのユニークな機能から「分子のふるい」とも呼ばれています。現在は、工場から排出される二酸化炭素の効率的な分離・回収や水素ガスの貯蔵・輸送など、さまざまな分野での実用化に向けた開発が進められています。

MOFがガスを吸着することは、京都大学の北川進先生によって1997年に初めて実証されました。当社は、この北川進先生と2021年より、環境分野での新たなソリューションの開発を目指して、共同研究を進めております。
当社は例えば、特定の構造を有するMOFが水の吸脱着の優れた機能を示すことに着目しました。従来の除湿材料であるゼオライトは、水の吸着は得意である一方で、水が強く吸着しすぎるため、水を脱離する際には多くのエネルギーを要してしまいます。
しかし、金属と有機配位子を適切に設計したMOFを用いれば、水を多く吸着しながらも、大幅に少ないエネルギーでその水を脱離することが可能となることが分かりました。

水の吸脱着を特長とするMOFは、さまざまな展開が期待されます。例えば、空気中の水蒸気をMOFに吸着させ、低いエネルギーで水として取り出すことができれば、水問題の解決につながるかもしれません。また、気候変動が引き起こす高温多湿問題に対しては、MOFが有する湿度調節機能を活用すれば、より快適な居住空間をつくることができるでしょう。
